2014年4月7日月曜日

皇位継承問題:女系天皇がダメな理由を理解したければ競馬をやれ

よしりんがまたおかしなことを言っているようなので。

 小林よしのり「愛子さまがしゃべったと驚くネトウヨの無知」――愛子さま、学習院女子中等科に入学ニュースを受けて。
 http://netouyonews.net/archives/8319677.html


この機会に皇位継承問題についてまとめてみる。

そもそも天皇家とは、現在の奈良県橿原で即位したとされる初代の天皇・神武天皇の一族である。
さらに神武天皇の男系(父親の父親の父親・・・)を辿ると、日本神話の最高神・天照大御神の息子神・アメノオシホミミに行き着く。

神武天皇の存在自体は、フィクションである可能性が高い。
実在したとされる最古の天皇は10代目の崇神天皇であり、神武天皇と崇神天皇は共にハツクニシラススメラミコト(「初めて天下を治めた天皇」の意)という同じ別名を有していることから、同一人物とする見方もある。

なお、日本が建国された年は、神武天皇の実在が怪しいためはっきりとしていない。
しかし、最低でも崇神天皇の在位期間である3世紀~4世紀頃には天皇家、及び日本国が存在していたことになる。
これは、天皇家=現存する最古の皇族家であり、日本国=現存する世界最古の国家であることを意味している。


さて。
崇神天皇以降(神話的には神武天皇やアメノオシホミミ以降)、天皇はその男系の子孫が代々、万世一系に即位してきた。

ここで問題になるのが、男系という言葉の意味だ。

何度説明されても理解してくれない人(例:田○陽子さん)がいるが、男系=男子ではない
現に、推古天皇や持統天皇など、歴史上6人の女性が天皇に即位している。
よって、男系が継承する=女性は天皇になれない、というわけではない。

天皇になれないのは、女性天皇の子どもである。


何故、女性天皇の子どもは皇位継承権がないのか?
これは、競馬で話をするとわかりやすい。

競馬は何よりも馬の血統を重視する。
世界中の全てのサラブレッドは、その祖先を辿れば必ず三大始祖(ダーレーアラビアン・バイアリーターク・ゴドルフィンアラビアン)に行き着く。
ある馬の血統の記録がどこかで途切れていれば、その馬はサラブレッドとして認められない。

サラブレッドの血統は、大きく2種類に分けられる。
父系(牡系)であるサイアーラインと、母系(牝系)であるファミリーラインだ。
サイアーラインは、その馬の父馬の父馬の父馬…を辿る血統であり、
ファミリーラインは、その馬の母馬の母馬の母馬…を辿る血統である。


例として、三冠馬ディープインパクトの血統を挙げよう。


ディープインパクトの父は、アメリカのダートで大活躍し、後に日本へ輸入された大種牡馬サンデーサイレンスである。
更にサンデーサイレンスの父は、アメリカでリーディングサイアー(一年間で産駒が最も良い成績を残した種牡馬)にもなった大種牡馬ヘイロー。
更に更にヘイローの父は、アメリカと日本を中心に一大系統を築き上げたヘイルトゥリーズンである。
ヘイルトゥリーズンの産駒にはヘイローの他にロベルト等がおり、ロベルトの息子ブライアンズタイムは日本で種牡馬となって、三冠馬ナリタブライアンなどを輩出した。
こうした一大系統を築くようになると、その種牡馬の名前をとって父系を「~系」と呼ぶ。
つまり、日本やアメリカでは、ヘイルトゥリーズン系という大きな父系の血族が繁栄していて、ヘイルトゥリーズン系は更にヘイロー系やロベルト系の血族に分化していくというわけだ。
なお、ヘイルトゥリーズンの始祖はダーレーアラビアンである。

次に、ディープインパクトの母系を辿る。
ディープインパクトの母は、アイルランドで生産されたウインドインハーヘアだ。
ウインドインハーヘアは、父がAlzao、母がBurghclereという血統で、ドイツでG1を勝っている。
Burghclereは目立った競走成績を残していないが、そのまた母のHighclereはヨーロッパのクラシックホース。
Highclereはヨーロッパの重賞勝ち馬を複数輩出し、その内の一頭・Height of Fashionは、母となって、イギリス二冠馬Nashwanなどを産んだ。
これがディープのファミリーラインである。

ここで、ディープの兄弟姉妹にも焦点を当てよう。
サラブレッドにおいて兄弟姉妹という話をした場合、「同じ母馬から生まれた子ども達」を意味する。
つまり、「同じ父馬から生まれた子ども達は兄弟姉妹とはみなさない」ということであり、サラブレッドの近親関係は全て母系が基準となっている。

ディープインパクトの母・ウインドインハーヘアはディープ以外にも、重賞を勝った兄・ブラックタイドや、スプリントで連勝街道を突き進んだ姉・レディブロンドなどを産んだ。
また、ディープの姉・レディブロンドからは、スペシャルウィークとの間にG1帝王賞を制したゴルトブリッツが生まれている。


重要なのは、父馬・母馬ともに、強い子どもを生み出すことが大切である点は同じだが、その直系の後継者として残さなければならない馬は、自身と同性である必要があるということだ。

ディープの父・サンデーサイレンスは、非常に多くの名馬を輩出した大種牡馬だ。
しかし、その種牡馬としてのサンデーサイレンスの後継馬は、優れた種牡馬でなくてはならなかった。
仮にG1を何勝もする名牝を生み出そうとも、その牝馬はサンデーの後継者足り得ないのだ。

例として、エリザベス女王杯を制したサンデー産駒の牝馬・トゥザヴィクトリーを挙げよう。
トゥザヴィクトリーは繁殖入りし、キングカメハメハとの間に、重賞を複数勝っているトゥザグローリーや、今月行われる皐月賞の有力馬の一頭・トゥザワールドを産んだ。
このトゥザヴィクトリーの競走成績が優秀であったのは、サンデーの手柄だ。
しかし、更にその子ども・トゥザグローリーやトゥザワールドが優秀なのは、父であるキングカメハメハや、トゥザヴィクトリーの母系の優秀さとして語られることになる。
子孫の血統表には名が残るが、サイアーライン・ファミリーラインのいずれにおいてもサンデーが直系の先祖として語られることはないのである。

それでは、サンデーの後継者となる種牡馬の成績についてはどうだろうか。
サンデーサイレンスの最高傑作・ディープインパクトは、既にダービー馬・キズナや、三冠牝馬でこの間ドバイでもG1を勝ったジェンティルドンナ等を輩出している名種牡馬である。
また、同じくサンデー産駒のステイゴールドは三冠馬オルフェーブルやゴールドシップを輩出し、スペシャルウィークはブエナビスタやシーザリオを輩出した。
これが、サンデーの父系の血統の優秀さ、及び「サンデーサイレンス系」の繁栄を示している。

一方、ディープの母系、ウインドインハーヘアの後継馬はどうだろうか?
ウインドインハーヘアが産んだ牝馬は複数いるが、その中でこれまでに繁殖牝馬として目立った活躍をしているのはレディブロンドだ。
先述したように、レディブロンドはスペシャルウィークとの配合でG1馬を産んでいる。
残念ながらレディブロンドは既に亡くなっているが、存命の娘にはシンボリクリスエスやアグネスタキオンとの間にできた産駒がいるようだ。
彼女たちには、ウインドインハーヘアの母系を伝えていくという重要な役割が課せられている。


競馬は血統のロマンだ。
一頭の馬の現役生活は通常3年程度と短い。
しかし、その馬が引退し、繁殖に入ると、数年後にはその仔が。
更に数年後には孫が活躍する姿を見ることができる。

競馬以外にも、野球で長嶋茂雄の息子・一茂がプロになったり、もしくは政治家が世襲をしたり。
一族の話は物語になることが多い。
競馬はそのスパンが非常に短いため、競馬=血統の物語として大変に面白いのだ。


ここでもうひとつ、血統ロマンの話として一頭の牝馬の名前を挙げたい。
ハープスター。
来週の桜花賞の大本命であり、とてつもない素質を秘めていると目される怪物だ。

このハープスター、祖母の名前をベガと言う。
牝馬クラシックで桜花賞とオークスを制した名牝である。
史上二頭目となる牝馬三冠のかかったエリザベス女王杯では、残念ながら3着に破れ、偉業の達成はならなかった。
しかし、このエリザベス女王杯の勝ち馬が、奇しくも同じ由来(こと座の一等星)で命名されたホクトベガ(後のダートの女王)であったため、「ベガはベガでもホクトベガ」という実況は伝説となった。

ベガは引退後、繁殖牝馬となり、2年連続でサンデーサイレンスと交配した。
その初年度産駒として生まれたアドマイヤベガは、牡馬クラシックの主役として日本ダービーを制した。
二番目の産駒、アドマイヤボスも重賞を勝っている。
更にティンバーカントリーとの間に生まれた三番仔のアドマイヤドンは朝日FSでG1を初制覇後、ダートに転向して通算でG1を7つ制した。
このように名繁殖牝馬であったベガだったが、残念ながら5頭の産駒を残して早逝してしまった。
うち4頭は牡馬であり、母系としての後継馬はファルブラヴ産駒のヒストリックスター1頭しか残すことができなかった。

ただ一頭しか後継者がいない。
これはベガの母系が断絶する可能性が危ぶまれる状況であった。
ヒストリックスターから優秀な馬が生まれるかわからない。
仮に優秀な繁殖牝馬だったとしても、後継馬を産む前に早死してしまうかもしれない。
しかし、そんな状況下で誕生したのが、ハープスターである。

祖母と同じ、こと座の星の名が付けられたハープスターは、異次元の末脚で新潟2歳Sを圧勝。
続く阪神JFこそ前を捕らえ損ねて2着に敗れたものの、前走チューリップ賞は大外を追い込んで危なげなく楽勝。
来週の桜花賞、続くオークスを制することになれば、世界最高峰のレース・凱旋門賞制覇も夢ではないはずだ。
そして、いずれはハープスターも母となり、その優秀な母系を脈々と伝えていくのだ。



さて。
競馬の話はここまでにして、天皇家の皇位継承に話を戻そう。

天皇の皇位継承者は、サラブレッドで言うところのサイアーライン・男系である。
歴史上、全ての天皇はこのサイアーライン(便宜上これを 神武系 と呼ぶ)を継ぐ者が即位してきた。
このサイアーラインこそが天皇であり、憲法に従って天皇=日本国の象徴であるならば、神武系
=日本国であると言っても過言ではない。

ここで、仮に愛子内親王が天皇になった場合を考えてみよう。
下図に愛子内親王の血統を示した。


愛子内親王の父は今上天皇の息子である徳仁親王であるため、神武系のサイアーラインの直系である。
そのため、愛子内親王が皇位を継承したとしても問題はない。

問題があるのは、愛子内親王の子どもが皇位を継承するケースである。

仮に、愛子内親王が木村という家の男を婿にとり、その木村某との間に生まれた子を天皇にするとしよう。
その子ども・女系天皇の血統を下図に示した。



この場合、女系天皇のサイアーラインは神武系ではなく、木村系となる。

一方、ファミリーライン・女系はどうだろうか?
愛子内親王の母・雅子殿下は小和田家の生まれである。
雅子殿下の母・優美子さんはチッソ元会長・江頭豊の娘だ。
さらに優美子さんの母・寿々子さんは、海軍大将山屋他人の娘。

つまり、愛子内親王の子どもは、サイアーライン・ファミリーラインともに、神武系の天皇家とは血統上関わりがないということになる。


皇位継承を男系に限定していることを、女性差別だと勘違いしている人がいる。
それは違うと説明しても、認めようとしない人がいる。
残念ながら、男系のみに限定された皇位継承は、本当に女性差別ではないのだ。
ただ、初代から天皇は男系が継承してきたから(初期の段階で男系の継承としたことに対して、女性蔑視が無かったとは断言できないが)、今更変えようがないというだけの話なのである。


天皇家に限らず、一族・氏(うじ)は血統に基づいている。
共通の祖先を持っているからこそ、同じ氏であり、天皇家なのだ。
それを無視して、女系天皇などを容認しようというのは、天皇家の存続という目的を重視するあまり、前提である血統を蔑ろにする愚策である。
女系天皇など、絶対に認めてはいけないと断じよう。

幸い、悠仁親王がお生まれになったおかげで、当面の皇位継承問題は据え置きとなった。
しかし、もしも今後、後継者がいなくなるような事態になったとするならば。
まずは、旧宮家から神武系の人間を候補にするべきだろう。
それもうまくいかなければ、天皇制を廃止し、日本国はその歴史に幕を下ろせばいい。
天皇家は日本国と切り離せない、固有にして最大の文化だが、盛者必衰・諸行無常、何物もいずれは失われる。
かつて天皇制が存在した元日本国は、その歴史を伝えつつ、大きくは変わることのない新しい国として再スタートするだろう。

1 件のコメント:

  1. サラブレッド喩えは判りやすいですね(飛ばし読みしましたが競馬好きも・・)
    >かつて天皇制が存在した元日本国は、その歴史を伝えつつ、大きくは変わることのない新しい国として再スタートするだろう。

    「大きく変わった」新しい国で再スタートできるかは世界史上の大実験でしょね。

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